インスリン製剤
- 2022年3月3日
- 診療内容
糖尿病は膵蔵からのインスリン分泌が低下することで発症する病気です。インスリン分泌が極端に低下する1型糖尿病では、インスリン製剤によるインスリンの補充が治療の中心になります。また、2型糖尿病においても、全ての症例でインスリン分泌は相対的に低下しています。その中で、インスリン分泌の低下が主体である場合(家族歴がある場合や、比較的若年で発症している場合)には、インスリン治療が必要になる場合があります。「低下しているインスリンというホルモンを適切に補充する」と捉えることができます。ホルモンの低下は、それぞれの努力や根性ではどうにもなりません。そこで、足りない分を上手に補うことが大切になります。
それでは、インスリンとは何をしているホルモンなのかご存知でしょうか。人が生命活動を維持していくために、必要なエネルギーである糖(グルコース)を体の中の細胞に貯めていることが、インスリンの役割です。人はエネルギーを食べることでしか得ることができません。食べたものは、胃腸で消化吸収されて体内に入ります。そのうち、血液中の糖(グルコース)が、いわゆる血糖です。食事をするとこの血糖の増加を、膵臓が速やかに感知して、インスリンを分泌します。出てきたインスリンは、血液中の糖(グルコース)を体の中の細胞(肝臓や筋肉)に取り込んでいきます。つまり、血糖値が下げながら、糖を体内に貯蔵していっていることになります。
私たちは1日や2日ご飯を食べなくても、低血糖にはなりません。これは貯蔵している糖を徐々に使っているからです。このように貯蔵(主に肝臓)している糖の放出を調整しているのも、インスリンなのです。身体の中からインスリンが無いと、貯蔵している糖が一気に放出されて、短時間で著明な高血糖になってしまいます。
このように、毎日のインスリン分泌は、食事ごとに分泌される追加分泌と24時間分泌続けている基礎分泌にわけられます。図 またその総量の比率は、追加分泌約30%、基礎分泌約70%と言われています。
私たちが食事を取っても血糖上がらないのは、追加分泌がしっかり出ている為、全くインスリンが枯渇している1型糖尿病患者さんが、何も食べなくても血糖上昇するのは基礎分泌がないからです。
インスリン製剤にも、食事の時の追加インスリン分泌を補うためのものと、基礎インスリン分泌を補うためのものがあります。
さらには、2種類のタイプが混ざったものもあり、内服薬と同様にそれぞれの患者さんの病態や状態に合わせて選択していくことになります。